
内部観測とは、認識不可能な外部に直接かかわることなく、しかし手探りで外部と接続しようとする/接続していく、過程であり行為である。内部とは観測者の認識体系の内部であり、認識できるものの全てである。したがって外部を認識し、外部と相互作用するということ自体、内部という観点からは在り得ない。外部は認識不可能、検知不可能であるから、外部と言われるのである。
認識不可能だから、検知不可能だから、外部は存在しない。そうではない。我々は経験において、以前認識できなかったことが、以後認識されることを知っている。ニュートンによって認識された重力は、彼以前、存在しなかった。りんごはただ落ちていたのである。その意味で認識は存在と分離できない。以前存在しなかったものが、以後存在する。こうして我々は事後の経験を通して外部の存在を経験する。
外部の経験は、科学のパラダイム変革のように、認識に関する歴史的大変革においてのみ認められるのではない。それは日常生活の中に、日々、出現する。昨日まで落書きだったものが今日アートになり、昨日まで河原の石ころだったものが今日ハンマーとなる。昨日まで整然と事務処理をこなすと信じていた自分の重要書類が、今日洗面所の歯ブラシの横に発見される。昨日まで風景の一部に過ぎなかった人が、今日友人となる。
外部を排除し、わかることだけやる、認識できることだけ判断する、計算可能なものだけ計算する。稀にしか起こらない想定外の事例を排除することは、経済効率からいえば妥当に思われる。しかし、認識できない、想定できないことは、現れて初めて内部と関与するのではなく、内部にいる我々において、外部に対処しようとする営為として関わっている。たまたまやってくる外部を、ただ待つのではなく、外部からやってくるように内部で動かし続け、運動し続け、行為し続ける。
無根拠に前提を設け、そこから論理的に帰結されることを述べていく。或る特定の前提から出発して帰結されることの全てを集めたものが、或る体系である。ここで前提と帰結を入れ替えてみる。今まで帰結できなかった、以前の体系外部が、いつの間にか取り込まれる。取り込まれた外部は、あらかじめ認識されていたわけではない。にもかかわらず、内部における前提と帰結の反転が、外部を結果的に呼び込んだのだ。論理だけの問題ではない。原因から結果の、因果推論は、結果と原因を反転することで、以前の因果関係の体系外部を取り込むことになる。我々はこうして、絶えず、外部を取り込むことができる。
外部を無視し、排除するのではなく、外部の存在に対する信頼を持って、何かを作る。何がやってくるかはわからない。やってくるべきものを想定し、作るのではない。単なる溝のつもりで穴を掘る。取り除かれた土は、とりあえず溝の周りに積み上げられる。土砂は、穴という前提からの帰結だ。積み上げられた土は、しかし見ようによっては山をよく写している。ならば、山を模写し、木々や石を配置し、穴の周りを賑やかにする。山から流れる滝を作るや、穴に水が溜まる。帰結と前提は反転し、穴は池となる。こうして蛙がやってくる。これが内部観測である。
研究会開催情報
第11回内部観測研究会+
第28回計測自動制御学会SI部門共創システム部会研究会
[日時]2017年2月25日(土)~26日(日)
25日 9:25〜17:30
26日 10:00〜17:25
[会場]東京都新宿区大久保3-4-1
早稲田大学西早稲田キャンパス
※講演会場は57号館2階202教室
※展示会場は56号館1階104教室
2月25日(土) 於・57号館202教室/56号館104号室
9:25-9:30 Opening Remarks 郡司ペギオ幸夫
第1部 (座長 西山アマテラス雄大)
9:30-9:45 郡司ペギオ幸夫(早大・基幹理工)15分
「外部を無自覚に取り込む逆ベイズ、いや群れとは?」
9:45-10:00 浦上大輔(日大・生産工学部)15分
「身体のゆらぎとセルオートマトン」
10:00-10:15 笹井一人(東北大・通研)15分
「無際限の非合理性にもとづくゆるい経済」
10:15-10:30 谷 伊織(総合研究大学院大学)15分
「バイパータイトグラフとして見るラフ集合誘導束と概念束」
10:30-10:45 中村恭子(東京外語大AA研)15分
「SAWACHI DE MOBY DICK complete」
(15分休憩)
第2部 (座長 郡司ペギオ幸夫)
11:00-11:30 松野孝一郎(長岡技術科学大学・名誉教授)30分
「観測と観測を結びつける運動としての逆因果性」
11:30-12:15 野村直樹(名古屋市立大学・名誉教授)・村中智明・冨田 淳・松野孝一郎 45分
「言語システムとしての時間(Time as Linguistic Systems)」(招待講演)
12:15-13:15 (昼休み/展示・56号館104号室)
第3部 (座長 春名太一)
13:15-13:30 野村収作(長岡技術科学大学)15分
「生体情報をフィードバックしたヴァーチャル・リアリティ映像の生理心理効果」
13:30-14:00 岡田美智男(豊橋技術科学大・情報知能工学系)30分
「<弱いロボット>研究の目指すもの」(招待講演)
14:00-14:15 藤井慶輔(理研・AIPセンター)15分
「集団スポーツにおける自己と他者」
14:15-14:30 中嶋浩平(京大・白眉)15分
「Physical Reservoir Computing」
14:30-14:45 上浦 基(東京電機大)15分
「確率と統計のあいだ」
(15分休憩)
第4部 (座長 澤 宏司)
15:00-15:15 春名太一(神戸大・理学部)15分
「内側から開かれたネットワーク」
15:15-15:30 齋藤建志(東京電機大)15分
「Neural Turing Machinesの再現と分析」
15:30-15:45 谷口英貴(防衛大学校)佐藤 浩、白川智弘 15分
「人間の認知バイアスの機械学習アルゴリズムへの実装」
(15分休憩)
第5部 (座長 上浦 基)
16:00-16:15 堀内智貴(早稲田大・創造理工)15分
「視空間操作インタフェースにおける奥行き感変容体験に関する研究」
16:15-16:30 澤 宏司(国際基督教大学高校)・Abir U. Igamberdiev(Memorial University of Newfoundland)15分
「N重ホムンクルスモデルにおける二値論理と多値論理」
16:30-16:45 西山アマテラス雄大(大阪大・産学連携本部)15分
「天照らすテルミコメツキガニの降臨」
56号館104号室 (隣の建物1階)
16:45-17:30 展示会 (皿鉢繪) および 自由討論
18:30- 懇親会
2月26日(日) 於・57号館202教室/56号館104号室
57号館202教室
第6部 (座長 谷 伊織)
10:00-10:15 村上 久(神奈川大学)15分
「他者が分かつ自発と反射」
10:15-10:30 園田耕平(立命館大)15分
「自動化システムと心」
10:30-10:45 松井哲也(国立情報学研究所)15分
「バーチャルキャラクターの外見イメージの持つ二重性」
(15分休憩)
第7部 (座長 浦上大輔)
11:00-11:15 竹之内大輔(株式会社わたしは)5分
「株式会社わたしは 平成29年度新製品報告会」
11:15-11:30 櫻沢 繁(はこだて未来大)15分
「循環化学反応系による感受と運動の結合」
11:30-11:45 吉田彩乃(はこだて未来大)15分
「環境と身体の境界が曖昧な中での運動の実現」
(昼休み/展示・56号館104号室)
第8部 (座長 笹井一人)
13:30-14:00 松宮一道(東北大通研・JSTさきがけ)30分
「身体近傍空間の視知覚における身体意識の役割」(招待講演)
14:00-14:15 箕浦 舞(早大理工)15分
「受動と能動の混同による身体性錯覚」
14:15-14:30 小島圭以(早大理工)15分
「身体所有感と操作感の動的関係に関するVR実験」
14:30-14:45 堀井洋一(日立製作所・早大理工)15分
「直進歩行を阻む脳:逆ベイズ推定を用いた意思決定プロセスのモデル化」
(15分休憩)
第9部 (座長 塩谷 賢)
15:00-15:30 近藤和敬(鹿児島大)30分
「「内在の哲学」への誘い」
15:15-15:55 黒木萬代(鹿児島大)25分
「アンティゴネーはなぜ死ななければならないのか」
(5分休憩)
第10部 (座長 村上 久)
16:00-16:15 都丸武宣(早大・基幹理工)15分
「オキナワハクセンシオマネキの巣穴闘争と縄張り」
16:15-16:30 崎山朋子(岡山大)15分
「アリの多様な意思決定に基づくパターン形成」
16:30-16:45 新里高行(筑波大)15分
「群はそこに向かう」
(5分休憩)
第11部 (座長 箕浦 舞)
16:50-17:20 塩谷 賢 (フリーランス)
「実在と認識の関係」30分
17:20-17:25 closing remark 笹井一人
アクセス

東京都新宿区大久保3-4-1早稲田大学西早稲田キャンパス
[講演会場] 57号館2階202教室
[展示会場] 56号館1階104教室

[交通案内]
JR 山手線 高田馬場駅から徒歩15分
西武鉄道 西武新宿線 高田馬場駅から徒歩15分
メトロ 副都心線 西早稲田駅に直結
東西線 早稲田駅から徒歩22分
バス 新宿駅西口-早稲田、都立身体障害者センター前
バス 高田馬場駅-九段下、都立身体障害者センター前